研究成果
クルミの葉から他の植物の生育を抑える新たな成分を発見
~環境に優しいバイオ除草剤の開発に期待~
生薬学分野
Journal of Agricultural and Food Chemistry
アクセス数:545
アレロパシーは、ある植物が特定の化学物質(アレロケミカル)を放出して周囲の植物の成長などに影響を及ぼす現象であり、生育を抑制するアレロケミカルは天然由来のバイオ除草剤の候補として注目されています。クルミ属の植物は強いアレロパシー活性を示すことが知られており、長い間その原因物質はジュグロンであると考えられてきました。
九州大学大学院薬学研究院のPoomraphie Nuntawong助教、森元聡名誉教授、坂元政一准教授らの研究グループは、順天堂大学薬学部の宮本智文教授、チュラロンコン大学薬学部のVaralee Yodsurang助教と共同で自然の圃場環境を模倣した土壌ベースのバイオアッセイを確立し、オニグルミ(Juglans mandshurica)の新たなアレロケミカルとして2Z-デカプレノールを同定しました。更に、2Z-デカプレノールが一部の防御応答系の経路(二次代謝産物の生合成や細胞壁修飾など)を選択的に活性化する一方で、ストレス応答系の経路(ジャスモン酸シグナル伝達や小胞体ストレス応答など)を抑制し、防御バランスを乱すことで標的植物に対する感受性を高めることを明らかにしました。
本研究成果は、植物間の化学的相互作用の理解を深めるだけでなく、環境に優しい次世代型のバイオ除草剤の開発に役立つことが期待されます。
本研究成果は、米化学会の学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」誌に2025年7月23日(水)にオンライン掲載されました。
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掲載誌:Journal of Agricultural and Food Chemistry タイトル:Allelochemical from leaves of Juglans mandshurica Maxim. and its transcriptomic effects in plants 著者名:Poomraphie Nuntawong, Kosei Ando, Tomofumi Miyamoto, Keisuke Matsuura, Thi Huynh Anh Huynh, Varalee Yodsurang, Satoshi Morimoto, Seiichi Sakamoto 【お問合せ先】 九州大学 大学院薬学研究院 准教授 坂元政一(サカモトセイイチ) TEL:092-642-6581 Mail:s.sakamoto@phar.kyushu-u.ac.jp 【リンク】 九州大学大学院薬学研究院 生薬学分野 https://seigyo.phar.kyushu-u.ac.jp/index.html 九州大学:研究成果 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1313 九州大学:プレスリリース(最新) https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/university/publicity/pressrelease/latest/ |
