富山大学学術研究部
薬学・和漢系
教授
宗 孝紀
(1993年卒、
1995年修士修了、
1999年博士学位取得)
私は理科の実験が大好きな少年でした。小学校の実験で観察した宝石のように美しい青い硫酸銅の結晶を今でも覚えています。科学者に憧れて九州大学薬学部に進学し、友人たちと過ごした楽しい思い出が蘇ります。薬学部では井本泰治先生と植田正先生にタンパク質の研究を教えていただき、九州大学歯学部で免疫の研究を学びました。
タンパク質という分子は体の中にも外にも存在します。私は体の免疫が内側のタンパク質ではなく、外からの細菌やウイルスなどのタンパク質にだけ反応する仕組みに興味を持ち、その研究で九州大学から博士号を取得しました。海外で研究をしたいという夢が叶い、13年間住んだ福岡を後にして、米国カリフォルニア州にあるラホヤアレルギー免疫研究所のMichael Croft先生の研究室に留学しました。免疫の調節に重要な腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーの研究を行いました。国際的な環境で研究に没頭した9年間を通して、多様な背景の人々と協調し、助け合うことの大切さを学びました。その後、TNFファミリー分子であるOX40の研究者である東北大学医学部の石井直人先生の研究室に帰国し、共同研究者の支援で研究を発展させることができました。現在は薬の文化が根付く富山大学薬学部で、これまで学んできたことを学生たちに教えています。
「薬」に関する最古の記述は紀元前2千年頃のメソポタミアの粘土板に刻まれています。「くすり」は「苦去り」から、「薬」は「病を治す草」から派生した言葉です。人類は病に対処するために植物や動物などから経験的に選び出し、知識を集約して「薬」を作り出してきました。エフェドリンやアドレナリンは日本人が発見した有名な「薬」です。
皆さんも「薬」に興味があると思います。「薬」が病に苦しむ人々を救うことを知っており、また、「薬」が体でどのように働くのかについて興味を持ち、治らない病気を治せる「薬」ができたらいいなと考えているかもしれません。
薬学部では、体内の物質が「薬」としてどのように健康を保つかを学びます。逆に、その物質が時には「毒」として病気の原因になることも学びます。また、「薬」がどのような形をしていて、これが体内に入って様々な場所に辿り着き、病気を治す仕組みを学びます。これらの知識を応用して「薬」の作り方を学び、さらに、患者さんの病気が良くなるように「薬」の使い方を学びます。
九州大学薬学部で学んでみませんか?「薬」の教育や研究を通じて社会に役立つ人材を育成するのが薬学部の使命です。九州大学薬学部は皆さんを育み、大きく成長させる場です。同級生、先輩、後輩との強い絆が、皆さんの将来の礎になります。皆さんが九州大学薬学部で修練することで自己を確立し、大きく飛躍されることを信じています。