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慢性腎臓病の新しいバイオマーカー候補を発見
-キラルアミノ酸分析を用いる腎不全の早期診断が期待-
創薬育薬産学官連携分野
Analytical Chemistry
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慢性腎臓病の新しいバイオマーカー候補を発見
ーキラルアミノ酸分析を用いる腎不全の早期診断が期待ー
慢性腎臓病はさまざまな原因によって腎臓の機能が徐々に低下していく疾患で、日本では1000万人以上、世界では8億人以上が発症していると推定されています。重症化すると透析や腎移植が必要であることに加えて、心筋梗塞や脳卒中を発症する危険性も上昇します。早期診断が実施できれば治療や予防につながりますが、現在使われているバイオマーカーでは早期の診断が難しく、鋭敏な新規マーカー探索が切望されていました。
九州大学大学院薬学研究院の石井千晴助教、浜瀬健司教授を中心とする研究グループ(大阪大学大学院医学系研究科 猪阪善隆教授 木村友則博士、九州大学大学院医学研究院 井手友美准教授、KAGAMI株式会社 三田真史CEOら)は、ヒト血中のキラルアミノ酸を高感度選択的に分析できる二次元LC-MS/MS法を構築し、健常人でのキラルアミノ酸含量変動と共に、慢性腎不全患者における含量変化を検討しました。その結果、健常人ではD型アミノ酸の血中濃度が低値に制御されていたのに対し、慢性腎不全患者の血中ではいくつものD型アミノ酸が有意に高値であることを示しました。特にD-グルタミン酸やD-フェニルアラニンは健常人では殆ど認められなかったのに対し、慢性腎不全患者では明確に認められる症例が多く、早期診断への新規マーカーとして今後の検討が期待されます。
本研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際誌「Analytical Chemistry」のオンライン版にて2024年3月13日(現地時間)に掲載されました。 論文タイトル: Evaluation of Individual Variation of d-Amino Acids
in Human Plasma by a Two-Dimensional LC–MS/MS System and Application to the
Early Diagnosis of Chronic Kidney Disease 著者:Chiharu Ishii, Takeyuki Akita, Tomonori Kimura, Shinsuke
Sakai, Masashi Mita, Tomomi Ide, Yoshitaka Isaka, Kenji Hamase 掲載誌: Analytical Chemistry DOI: 10.1021/acs.analchem.3c05309 公表日: 2024年3月13日(水)(オンライン公開) |