トップニュース
DNA中の酸化損傷核酸(2-OH-dA)を選択的に認識可能な人工核酸の開発に成功!
~DNA酸化損傷が関与する疾患の診断・治療に期待~
先端的核酸創成化学分野
Journal of the American Chemical Society
アクセス数:1649
DNA中の酸化損傷核酸(2-OH-dA)を選択的に認識可能な人工核酸の開発に成功!
~DNA酸化損傷が関与する疾患の診断・治療に期待~
九州大学大学院薬学研究院 先端的核酸創成化学分野の谷口陽祐准教授および宮原涼大学院生は、DNA中の酸化損傷核酸(2-OH-dA)を選択的に認識可能な人工核酸(ψdC)の開発に成功しました。
DNAは損傷を受けており、修復されることによりその恒常性を保っています。中でも、エネルギー代謝、紫外線や放射線に暴露されることにより発生するROS(活性酸素種)によって絶えず酸化損傷を受けています。プリン核酸のひとつである2’-デオキシアデノシン(dA)の核酸塩基部分の2位が酸化を受けた2-OH-dAは、チミンのみならずグアニンとも安定な塩基対を形成するため、複製の段階でAT塩基対からCG塩基対へのトランスバージョン変異を引き起こし、様々な疾患の発症に関わっていると考えられています。
しかしながら、2-OH-dAのDNA中の量は非常に少なくさらに有用な検出法が開発されていないことから、その詳細に関しては不明な部分が多い状況であります。
今回、谷口准教授および博士後期課程2年の宮原は、DNA中の2-OH-dAの互変異性体構造に着目し、その構造に対応しながら安定な塩基対を形成可能な人工核酸(シュードdC(ψdC))を設計し化学合成を行いました。合成した人工核酸をDNAに組み込み融解温度測定を行うことにより、相補的な位置に2-OH-dAある時にのみ非常に安定な2本鎖DNA形成が観測されました。また、トリリン酸体を合成し酵素反応によるプライマー鎖伸長反応を行うことにより、ψdCTPは鋳型鎖の2-OH-dAの相補的な位置に選択的に取り込まれ、さらに伸長反応が進行することを明らかにしました。
本人工核酸を用いた研究をさらに発展させることにより、酸化損傷核酸である2-OH-dAを基軸とした疾患の診断などの開発につながると期待されます。
本研究は、JST「創発的研究支援事業:非天然核酸による損傷DNAシーケンシング技術の創成」(Grant Number JPMJFR2068)、JST「次世代研究者挑戦的研究プログラム」(Grant Number JPMJSP2136)などにより支援を受けました。
本研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際化学誌「Journal of the American Chemical Society」(IF: 16.383)に2022年8月24日付けオンライン版で発表されました。
<論文情報>
掲載誌:Journal of the American Chemical Society
タイトル:Selective Unnatural Base Pairing and
Recognition of 2-Hydroxy-2‘-deoxyadenosine in DNA Using
Pseudo-dC Derivatives
著者:Ryo Miyahara and Yosuke Taniguchi*
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.2c07000
先端的核酸創成化学分野HP
https://bioorg.phar.kyushu-u.ac.jp/
JST 創発的研究支援事業
https://www.jst.go.jp/souhatsu/