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研究成果

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研究成果 2023年

研究成果
脂肪酸分解代謝を蛍光検出するケミカルプローブを開発
〜エネルギー代謝と疾病の関連を解明する新しいツールとして期待〜
創薬ケミカルバイオロジー分野 Journal of the American Chemical Society
2023.04.06

アクセス数:1350

脂肪酸分解代謝を蛍光検出するケミカルプローブを開発

〜エネルギー代謝と疾病の関連を解明する新しいツールとして期待〜

 

脂肪酸を分解する代謝経路(β酸化)は、ATP合成に関与する重要なエネルギー代謝経路の一つです。β酸化は様々なガンで活性化されているほか、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの疾病と深く関与していることが知られており、β酸化活性を検出するツールの開発はβ酸化が関与する疾病メカニズムの解明や創薬研究に貢献できると期待されます。一方、これまでのβ酸化活性を検出する手法(安定同位体標識した脂肪酸など)では検出の際に細胞を破砕する必要があることから、個々の細胞の活性情報(不均一性)が失われ、β酸化活性の不均一性に関する詳細な解析が困難でした。

今回、九州大学大学院薬学研究院の王子田彰夫 教授、内之宮祥平 助教らを中心とする研究グループは、β酸化活性を蛍光検出するための新しいケミカルプローブを開発しました。このケミカルプローブを用いることで、培養細胞やマウス肝臓内のβ酸化活性を一細胞レベルで初めて蛍光イメージングすることが可能となりました。さらに、マウスに発ガン性物質を投与した際の肝臓でのβ酸化活性変化をイメージングやフローサイトメトリーなどの蛍光検出法で追跡するとともに、RNAシークエンスと組み合わせたβ酸化不均一性の解析にも成功しました。今後は、本プローブを用いてガンやNAFLDなど様々な疾患におけるβ酸化不均一性とその要因の解明を行っていく予定です。

本研究は九州大学大学院薬学研究院の松永直哉 教授、大戸茂弘 教授、小柳悟 教授らの研究グループとの共同研究であり、創薬等先端技術援基盤プラットフォーム(BINDS)の助成のもとにわれた研究です。

本研究成果は、国化学会の学術誌「Journal of the American Chemical Societyオンライン版202343日(月)に掲載されました。

 

掲載誌:Journal of the American Chemical Society

 

論文タイトル:Fluorescence-Based Detection of Fatty Acid β‑Oxidation in Cells and Tissues Using Quinone Methide-Releasing Probes

 

著者名 : Shohei Uchinomiya#, Tomoki Nagaura#, Mark Weber, Yuya Matsuo, Naoki Zenmyo, Yuya Yoshida, Akito Tsuruta, Satoru Koyanagi, Shigehiro Ohdo, Naoya Matsunaga, and Akio Ojida

#: equally contributed.

 

DOI : 10.1021/jacs.3c02043

 

創薬ケミカルバイオロジー分野 : https://bunseki.phar.kyushu-u.ac.jp/

 
Image
 

ケミカルプローブによるβ酸化活性の蛍光検出