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研究成果

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研究成果 2011年

研究成果
神経障害性疼痛の発症に重要な損傷神経由来分子を特定
薬理学分野 The EMBO Journal 誌に掲載
2011.03.26

アクセス数:5769

末梢神経などの神経系の損傷によって,既存の鎮痛薬が効きにくい「神経障害性疼痛」と総称される慢性疼痛が発症しますが,そのメカニズムはわかっていません。今回,九州大学大学院薬学研究院薬理学分野の井上和秀教授らの研究グループは,Knut Biber教授(University of Freiburg,ドイツ)およびHendrikus Boddeke教授(University Medical Center Groningen,オランダ)との共同研究で,障害を受けた末梢神経で発現するケモカイン「CCL21」が神経障害性疼痛の発症に重要であることを発見しました。さらに同グループは,CCL21が末梢神経軸索を通って脊髄後角に輸送され,脊髄内でミクログリアという細胞に作用,そして同グループが以前に突き止めた神経障害性疼痛の重要タンパク質「P2X4受容体」(細胞外ATPで活性化されるイオンチャネル)の発現を増加させることを明らかにしました。

この研究成果は,障害を受けた神経がどのようなメカニズムで疼痛を発症するのか,どのようにミクログリア細胞でのP2X4受容体発現が増加するのかという,これまでの大きな疑問を解明する重要な手掛かりとなり,神経障害性疼痛メカニズムの解明に結びつくことが期待されます。

この研究は,文部科学省科学研究費補助金,さらに財団法人病態者研究会および財団法人持田記念医学薬学振興財団からの研究助成金による成果です。

この研究成果は,国際科学誌「The EMBO Journal」に2011325日付けオンライン速報版に掲載されました。

 

 

論文

Knut Biber*, Makoto Tsuda*, Hidetoshi Tozaki-Saitoh*, Keiko Tsukamoto, Emika Toyomitsu, Takahiro Masuda, Hendrikus Boddeke, Kazuhide Inoue

(*These authors contributed equally to this work)

Neuronal CCL21 up-regulates microglia P2X4 expression and initiates neuropathic pain development

EMBO J, in press (2011)

 

The EMBO Journal

http://www.nature.com/emboj/journal/vaop/ncurrent/full/emboj201189a.html

 

薬理学分野

http://yakkou.phar.kyushu-u.ac.jp/