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研究成果

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研究成果 2019年

研究成果
MCM8-9の抑制はがん細胞選択的にプラチナ製剤およびPARP阻害剤感受性を上昇させ、新たな抗がん剤開発の標的となる
医薬細胞生化学分野 Cancer Science誌
2019.04.03

アクセス数:2501

九州大学大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野の藤田雅俊教授らの研究グループは、国立遺伝学研究所の鐘巻将人教授の研究グループと共同で、MCM8-9の抑制はがん細胞選択的にプラチナ製剤およびPARP阻害剤感受性を上昇させ、新たながん特異性の高い抗がん剤開発の標的となることを発見しました。
 
MCM8-9はMCM2-7複製ヘリカーゼのオルソログですが、これらは主にDNA複製ストレスによる染色体ダメージの回復に機能していることが最近明らかにされつつあります。一方で、がん細胞は高い増殖刺激のため、正常細胞より高い複製ストレスを受けていることもわかってきています。プラチナ製剤およびPARP阻害剤は高い治療効果をもつ抗がん剤として汎用されていますが(特にプラチナ製剤)、なお治療効果には限界があり、また副作用や治療抵抗性も問題となっています。このプラチナ製剤およびPARP阻害剤は、複製進行を停止させることで複製ストレスを誘導し、抗がん効果を発揮していると考えられています。
そこで種々のがん細胞および正常細胞でMCM8-9の発現を抑制し、プラチナ製剤およびPARP阻害剤に対する感受性の変化を調べました。その結果、MCM8-9の抑制はがん細胞選択的にプラチナ製剤およびPARP阻害剤感受性を上昇させることが明らかとなりました。これらの結果から、MCM8-9活性の阻害剤(薬剤)を開発できれば、新たながん特異性の高い抗がん剤となることが予想され、今後そのような薬剤の開発に期待が持たれています。

本研究成果は、国際科学誌「Cancer Science」に発表されると共に、注目の論文として表紙等にハイライトされました。



論文名
Inhibiting the MCM8-9 complex selectively sensitizes cancer cells to cisplatin and olaparib

著者
Morii I, Iwabuchi Y, Mori S, Suekuni M, Natsume T, Yoshida K, Sugimoto N, Kanemaki MT, and Fujita M

DOI
10.1111/cas.13941


論文オンライン公開HP
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/cas.13941

医薬細胞生化学分野HP
http://tansaku.phar.kyushu-u.ac.jp/saito/top.html