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タイトル 長く議論されてきたヒト細胞におけるDNA複製開始点決定機構に関する新たな成果
参照元 Nucleic Acids Research誌 (IF 10.162)
分野名 医薬細胞生化学分野
 九州大学大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野の杉本のぞみ助教・藤田雅俊教授らの研究グループは、次世代シークエンサーを用いたMCM複製ヘリカーゼ結合領域のゲノムワイドな解析を行い、そのデータと多くの既存のクロマチン関連のゲノムワイドデータを用いて広範なバイオインフォマティクス解析を行うことで、長く議論されてきたヒト細胞におけるDNA複製開始点決定機構に関する重要な知見を得て発表を行いました。
 
 遺伝情報の本体であるDNAを正確に複製することはゲノムを安定に維持する上で必須です。DNA複製は染色体上に多く存在する「複製開始点(replication origin)」から開始します。しかし、ヒト細胞を含む高等真核細胞においてどのように複製開始点が決定されているのかということに関しては、未だ不明な点が多く長く議論の的でした。本研究ではまず、複製開始反応に必須であるMCM複製ヘリカーゼの結合領域をゲノムワイドに正確に決定しました。ここで問題となるのは、染色体に結合したMCMの多くは不活性なままの休眠状態(dormant origin)であり、その一部のみが活性化して複製開始点として機能するということです。そこで、MCMのデータを既存の複製開始点のデータと比較することで活性化複製開始点と休眠複製開始点に分別し、それらのクロマチン状態や転写との関連を広範に調べました。その結果、MCM全体は比較的広範囲に均一に分布する一方で、転写が盛んな遺伝子の転写開始点(TSS)の上流部にあるMCMが多く活性化されていることが判明しました。このように、転写と共役してTSS上流に可塑的に複製開始点が形成されるのは、転写と複製の衝突によるDNAダメージを回避するための戦略であると考えられます。本研究では併せて、染色体脆弱部位(CFS)と呼ばれる染色体切断が多発する領域の性質に関しての新たな知見も得られ報告されています。いわゆる“ビッグデータ”を取り扱い解析することで得られた本研究成果は、遺伝情報継承の本質を捉える上でも、また“がん”にもつながる染色体脆弱性のメカニズムを考える上でも重要な発見であると考えられます。

この研究成果は、国際科学誌「Nucleic Acids Research」に2018年6月9日付けオンライン版で発表されました。



論文名
Genome-wide analysis of the spatiotemporal regulation of firing and dormant replication origins in human cells

著者
Sugimoto N, Maehara K, Yoshida K, Ohkawa Y and Fujita M

DOI
10.1093/nar/gky476

論文オンライン公開HP
https://doi.org/10.1093/nar/gky476

医薬細胞生化学分野HP
http://tansaku.phar.kyushu-u.ac.jp/saito/top.html

ファイル
発行年 2018
日付 2018-06-11 12:17