センター長から

井上 和秀

 西暦2016年から始まる第3期中期目標では、国立大学に対して、各大学が形成する強み・特色を最大限に生かし、自ら改善・発展する仕組みを構築することにより、持続的な競争力を持ち、高い付加価値を創造することが求められる。特に、九州大学は、卓越した成果を創出している海外の一流大学と伍して、全学的に卓越した世界最高水準の教育・研究、社会実装を推進する取り組みを中核とする国立大学としての機能が求められる。また、社会からは、社会への貢献を第一に意識し、多様な役割を一層果たしていくことが求められる。それらに先んじて、国立大学は機能強化の一環として、大学の設置目的、全国的あるいは政策的視点からの強み・特色、および社会的役割を明確にするために、ミッションの再定義を行った。その結果、九州大学薬学研究院のミッションの一つとして、「分野横断的な取組や産学官の連携、国際研究交流や橋渡し研究といった学術的基盤の充実を元に、革新的な医薬品・診断マーカーの迅速かつ効率的な開発を目指す研究を初めとする独創的な研究(痛み研究拠点の経験を活かしたグリーンファルマ研究等)を推進するとともに、次代を担う人材の育成を進める」ことが定義された。

 このような背景と要請に応えるために、薬学研究院では、創薬科学と臨床薬学との共同研究の推進、産学官連携創薬育薬共同研究ならびに国際連携共同研究の深化を図り、その研究成果を広く社会に還元するとともに、薬学に関する最先端の学術情報を提供することを目的とした組織体として、附属産学官連携創薬育薬センターを2014年1月1日に設置した。そして、この組織が目的を遂行するための研究施設として、システム創薬リサーチセンター「グリーンファルマ研究所」の建設を概算要求し、それが認められ2015年2月に竣工した。

 ここでは、薬学研究院が国家新成長戦略ライフイノベーションに呼応して進めてきたシステム創薬リサーチ構想、すなわち医学系・保健系が集積する地の利を活かした部局間連携・分野横断型の教育・研究体制により、独創的な創薬研究(グリーンファルマ研究)やグローバル国際共同研究を実現する。そして、文部科学省創薬等支援技術基盤プラットフォーム「大型創薬研究基盤を活用した創薬オープンイノベーションの推進」(創薬PF)事業を実践し、国内外の大学、企業、先導的学術研究拠点・ARO次世代医療センターと連携し、日本初の革新的な医療薬品創出を目指す先端的トランストレーショナル研究を推進する。並行して、学生・女性・若手研究者を「くすりのプロ」として育成し次代を担う人材の育成を進める。そのため学内・学外・国際産官学連携研究を行うための開かれた研究所・共同研究機関とする。

 薬学研究院では「九大痛み研究拠点」形成を中心に、既承認薬を新たな新薬候補として迅速かつ安全に適応拡大するための育薬研究(エコファーマ)を行ってきた。エコファーマと地球環境に優しい薬の合成(グリーンケミストリー)を融合させた『グリーンファルマ』は、「痛み研究拠点」を基盤にエコファーマを実践してきた経験(平成26年度紫綬褒章)と薬の省資源合成を可能にする多核金属クラスター触媒を用いた環境調和型直接変換反応技術(文部科学大臣賞受賞)を併せもつ九州大学薬学研究院でしかできない取組みである。加えて、薬学研究院には有機合成化学や構造解析学、臨床薬学に精通した魅力的な人材が集まっている。グリーンファルマには、医薬品の寿命を延長することに繋がるドラッグリポジショニング(DR,既存薬のあらたな適応拡大)という概念も含まれることから、今後はDR研究も行うことができる。さらには、医系キャンパス内他部局、九大病院や企業・官公庁、国際研究機関との連携を強化することで、独自の分野横断的な創薬・育薬研究が展開でき、我が国の死亡率7割を占める三大死因疾患(がん、脳心血管疾患、感染症)を克服できる革新的な医薬品候補あるいは診断マーカーの効率的な開発が可能となる。

 「グリーンファルマ研究所」は、馬出病院キャンパスの東門地下鉄入り口付近に建設されるため、九州大学の顔の一つとして多くの市民の目にも触れやすい。小ぶりであるが光り輝くダイヤモンドのようなこの研究所から、世界の人々に役立つ優れた医薬品が誕生していくことを切に願っている。

2015年4月1日
附属産学官連携創薬育薬センター長
井上 和秀

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