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テロメア(染色体末端)構造安定性保持のための新たな分子メカニズムを解明
医薬細胞生化学分野 Nucleic Acids Research
2021.11.15

アクセス数:2553

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 九州大学大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野・吉田和真前助教と藤田雅俊教授の研究グループは、テロメア(染色体末端)構造安定性保持のための新たな分子メカニズムを明らかにしました。

 

 ヒトを含む真核細胞の染色体は線状構造をしており、その末端はテロメアと言われます。テロメアはDNA断端であるため、特殊な構造と制御を受けることで安定性を保っています。これらの制御が異常になるとテロメアの安定性が損なわれ、細胞老化や細胞死、がん化などにつながります。同研究グループは以前、TRF2と言われるテロメア構造保護蛋白質とORCと言われる複製開始点認識複合体が結合することを見出し、この結合を介して効率よく複製開始複合体がテロメアに形成されることを報告していました。しかし、この分子機構が実際にテロメアの安定性保持に必要なのかを明確にできていませんでした。今回、ORC1結合欠損変異体TRF2ORC1と結合できないTRF2変異体)を同定すること等により、このTRF2ORCの結合を介した効率よい複製開始複合体のテロメアでの形成がテロメア安定性保持に重要であることを明らかにしました。例えば、ORC1結合欠損TRF2 EE変異体を持つ細胞では、テロメアが切断されてしまうことで形成されるテロメア含有微小核の形成頻度が複製ストレス時に大きく上昇してしまいます(図)。以上のことから、TRF2-ORC結合を介して染色体末端に効率よく複製開始複合体を形成することにより、染色体内側からのDNA複製の進行が阻害された場合に末端側から複製を開始することができ、テロメアの安定性が保たれることが明らかになりました。

 

 本研究成果は、国際学術誌「Nucleic Acids Research」に20211111日付けオンライン版で発表されました。


論文名

TRF2-mediated ORC recruitment underlies telomere stability upon DNA replication stress

DOI 10.1093/nar/gkab1004/6425542


著者

Mitsunori Higa, Yukihiro Matsuda, Jumpei Fujii, Nozomi Sugimoto, Kazumasa Yoshida, Masatoshi Fujita

  

論文オンライン公開HP 

https://academic.oup.com/nar/advance-article-abstract/doi/10.1093/nar/gkab1004/6425542

 

医薬細胞生化学分野HP http://tansaku.phar.kyushu-u.ac.jp/saito/top.html