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DNA複製が困難な領域のストレスからゲノムを守る新しいシグナル伝達経路を発見!
医薬細胞生化学分野 Journal of Cell Biology誌
2020.12.22

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九州大学大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野の藤田雅俊教授、吉田和真特別研究員らの研究グループは、難病であるファンコニ貧血に関与する遺伝子のSLX4とXPFが、DNA複製を妨げる「DNA−タンパク質複合体」による複製ストレスに対して、DNAの修復を促すDNA損傷応答経路を活性化し、ゲノムの安定な継承を可能にしていることを明らかにしました。

私たちの身体を構成する細胞は、約30億塩基対からなるゲノムDNAを正確に複製し、細胞分裂を経て増えていきます。DNA複製を妨げ、ゲノム不安定性を引き起こす複製ストレスに対するDNA損傷応答経路の研究は、これまで薬剤や紫外線等による外因性の複製ストレスに対するものを中心に進められてきました。一方、ヒトのゲノムにおいて内因性の複製ストレスとして「複製が困難なゲノム領域 (テロメア、セントロメア、リボソームDNA領域等)」の存在が知られていますが、これら領域の複製ストレスに対する応答の詳細は不明でした。
本研究グループは、内因性の複製ストレスの一因である「強固なDNA-タンパク質複合体」にDNA複製装置が衝突した時に、どのようなDNA損傷応答が起きるのかを研究するため、ヒト染色体上での複製障害物として大腸菌由来のlacO-LacI相互作用 (転写調節領域lacO配列へのLacIタンパク質の結合)を利用したユニークな実験モデル系を構築しました。網羅的解析の結果、DNA損傷応答の足場タンパク質であるSLX4が構造特異的DNAエンドヌクレアーゼXPFをストレス部位へと呼び込み、その下流でATR、FANCD2、RAD52が働くという新規経路を明らかにしました。さらに、lacO配列の複製完了にSLX4-XPF-ATR経路が大きく寄与することが分かりました。本研究は、DNA複製やゲノム修復維持機構、さらにがん遺伝子活性化による複製ストレスによって引き起こされるゲノム不安定性誘導機構等の全容解明に向けた重要な基盤になると考えられ、今後のさらなる進展が期待されます。



本研究成果は、米国科学専門誌「Journal of Cell Biology」に2020年12月21日付けオンライン版で発表されました。

論文名: SLX4–XPF mediates DNA damage responses to replication stress induced by DNA–protein interactions
著者名: Riko Ishimoto, Yota Tsuzuki, Tomoki Matsumura, Seiichiro Kurashige, Kouki Enokitani, Koki Narimatsu, Mitsunori Higa, Nozomi Sugimoto, Kazumasa Yoshida, and Masatoshi Fujita
掲載誌: Journal of Cell Biology
DOI: 10.1083/jcb.202003148

論文オンライン公開HP

九州大学広報室プレスリリース (PDF)

Kyushu University Research News

医薬細胞生化学分野HP