イベント・セミナー
ゲノムDNA安定化に寄与する普段は見えないDNA合成
講演者:鐘巻将人先生 所属:国立遺伝学研究所・新領域創造センター分子機能研究室開催日:2014-10-24 16:00
終了日:2014-10-24 17:00
■研究セミナーのご案内■
この度、国立遺伝学研究所・新領域創造センター分子機能研究室・鐘巻将人先生に、下記の要領で研究セミナーを行って頂きます。
ご存知の方も多いと思いますが、鐘巻先生はオーキシンデグロン法による蛋白質発現制御系の開発者であり(Nat Methods 2009)、その系などを利用して最先端の複製・修復・クロマチン研究を行っておられます。最近の研究成果について興味深いお話をお聞きできるかと思いますので、皆様のご参加をお待ちしています。
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日時: 平成26年10月24日(金) 16:00~17:00
場所: 薬学部第4講堂(薬学部2号館5階)
演者: 鐘巻将人先生 (国立遺伝学研究所・新領域創造センター分子機能研究室)
演題: ゲノムDNA安定化に寄与する普段は見えないDNA合成
ヒトは一生の間に驚くほど膨大な長さのゲノムDNAを複製します(その長さについては当日議論しましょう)。DNA複製は危険な細胞内イベントで、仮に問題が起きればゲノムDNAの不安定化や遺伝情報の損失などにより、細胞死やがん化に繋がる可能性をはらんでいます。そこで細胞はDNA複製中に起こる問題に対処する複数のメカニズムを持っています。姉妹染色体間の相同組換えは、複製フォークを構成する複製ヘリカーゼMCM2-7がDNA二本鎖間架橋(inter-strand crosslink: ICL)などにより進行を妨げられた際、ICL部位の修復と複製フォークのリスタートに重要な役割を果たすと考えられています。ICL修復過程にはファンコニ貧血症原因因子やRAD51、BRCA2などが協調的に作用し組換えを誘導することが比較的よく理解されていますが、その後のDNA合成再開を含むリスタート反応の分子機構はほとんど理解されていません。
近年、私たちは複製ヘリカーゼMCM2-7と同じ祖先分子より進化したMCM8とMCM9が新規複合体を形成しICL修復反応に関与することを明らかにしました(Nishimura et al.,
Mol Cell, 2012)。CRISPR-CAS9法を利用したゲノム編集により、MCM8およびMCM9欠損ヒト細胞株を作製し研究を進めたところ、MCM8-9複合体はRAD51の下流で複製フォークリスタートに関与していることが明らかになりつつあります。また最近の構造学的、および生化学的結果はMCM8-9がヘリカーゼとしてDNA合成を促進している可能性を支持しています。以上の結果から私たちが現在考えている複製フォークリスタートのモデルを示すとともに、S期に起きる通常のDNA複製と組換え依存的“見えないDNA合成”の関係、さらには生命におけるDNA複製/合成メカニズムの進化についても考察したいと思います。
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連絡先:藤田雅俊
〒812-8582
福岡市東区馬出3-1-1
九州大学 大学院薬学研究院
医薬細胞生化学分野