研究成果 2024年
アンモニウム塩で加速されるアミド切断反応における官能基共存性の評価と、切断反応を促進する新規酸性添加剤の発見
環境調和創薬化学分野 Frontiers in Chemistry (IF 5.5)アクセス数:700
アミド結合は、医薬品やペプチドなどに広く含まれる重要な構造の一つですが、その切断には一般的に強酸や強塩基などの厳しい反応条件が必要とされ、官能基共存性が制限されています。よって、温和な条件下で不活性なアミド結合を切断できる反応の開発は、様々な官能基を有する有機化合物の合成が必要な医薬化学において、重要な課題の一つです。
九州⼤学⼤学院薬学研究院の⼤嶋孝志教授、森本浩之准教授(現 九州工業大学大学院工学研究院物質工学研究系)、崔智修大学院⽣、縄稚杏奈⼤学院⽣らの研究グループは、以前に報告したアンモニウム塩存在下で加速されるヒドラジン水和物によるアミド結合切断反応について、昨年報告した官能基評価(FGE)キットの26種類の化合物を添加剤として加えて、反応速度や収率に対する影響を評価しました。その結果、上記のアミド結合切断反応条件において共存可能な官能基を明らかにすることができました。
また、上記の官能基共存性の検討過程で、本反応をさらに促進する酸性の新規添加剤を複数見出しました。新たな酸性添加剤の発見は、アミド結合の切断反応における効率性と柔軟性を大幅に向上させ、医薬品や複雑な有機分子の合成においてさらなる展開をもたらすことが期待されます。以上の結果は、FGEキットが機械学習に適用可能なデータの収集のみならず、新しい反応の開発につながる“予期せぬ発見”をもたらすことを明らかにしました。
本研究成果は、オープンアクセスの国際化学誌「Frontiers in Chemistry」のオンライン版に2024年5月22日に掲載されました。
【論文名】 Evaluation
of functional group compatibility and development of reaction-accelerating
additives in ammonium salt-accelerated hydrazinolysis of amides 【著者】 Jeesoo Choi, Anna Nawachi, Natsuki Saito, Yuta
Kondo, Hiroyuki Morimoto, and Takashi Ohshima 【発表誌】 Front. Chem. 2024, 12, 1378746. DOI: 10.3389/fchem.2024.1378746 URL: https://doi.org/10.3389/fchem.2024.1378746 環境調和創薬化学分野HP https://green.phar.kyushu-u.ac.jp |