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研究成果

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研究成果 2020年

研究成果
カルボン酸の新規触媒的エノラート化法およびラジカル機構によるα-酸化反応を開発
環境調和創薬化学分野 Journal of the American Chemical Society (IF 14.695)
2020.02.14

アクセス数:3630

九州大学大学院薬学研究院環境調和創薬化学分野の田中津久志大学院生、矢崎亮助教、大嶋孝志教授は、カルボン酸の新規触媒的エノラート化(エンジオラート化)法の開発と、本手法を用いたラジカル機構によるカルボン酸の触媒的α-酸化反応の開発に成功しました。

医薬品等の機能性分子中に遍在するエステルやアミドといったカルボニル基の原料として、カルボン酸は入手性・安定性・変換反応の多様性の観点から理想的なビルディングブロックの一つです。そこで、より多様な化合物への容易なアクセスのためにカルボン酸のさらなるケミカルスペース拡充および効率的な修飾法の開発が求められており、配向基等を必要としないカルボン酸の直接的α-官能基化反応の開発は重要な研究課題です。

カルボン酸のα-官能基化反応において1,1-エンジオラートは重要な活性中間体であり、より温和な生成法の開発が望まれていました。しかし、従来法ではカルボン酸特有のBrønsted酸性により化学量論量の外部塩基が必要であり、また古典的なイオン型反応を補完しうるレドックス活性な触媒系は未だ達成されていませんでした。このような背景のもと、本研究グループは、化学量論量の外部塩基を必要としない、レドックス活性なLewis酸触媒を用いたラジカル機構によるカルボン酸の直接的触媒的α-酸化反応の開発に成功しました。

本研究では詳細な反応機構解析により、鉄とアルカリ金属の異種金属協働型触媒系によるカルボン酸の新規エノラート化機構を明らかにしました。本機構により、本反応ではケトンやエステル、アミドといったカルボニル化合物の共存下におけるカルボン酸の化学選択的なα-酸化反応を達成しました。また、本反応は複雑な構造を有する医薬品群に対しても適用可能であり、ユビキタスなカルボン酸のさらなる効率的な分子変換プロセスへの応用が期待されます。




本研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際誌「Journal of the American Chemical Society」に2020年2月13日付けオンライン版で発表されました。

<論文名>
Chemoselective Catalytic α–Oxidation of Carboxylic Acids: Iron/Alkali Metal Cooperative Redox Active Catalysis

<著者>
Tsukushi Tanaka, Ryo Yazaki*, Takashi Ohshima*

<発表誌>
Journal of the American Chemical Society
DOI: 10.1021/jacs.0c00727
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.0c00727

環境調和創薬化学分野HP
http://green.phar.kyushu-u.ac.jp