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研究成果

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研究成果 2020年

研究成果
心筋梗塞後の病態を悪化させる新たな分子を同定
薬効安全性学分野 The FASEB Journal
2020.06.15

アクセス数:4461

 心筋梗塞は、心臓を拍動させる心筋細胞に血液を送る冠動脈が動脈硬化などにより詰まることで発症する疾患です。心筋梗塞が発症すると心筋細胞に供給される酸素や栄養が欠乏するため、心筋細胞が死にます。細胞が死ぬとその内容物が流出することなどにより炎症が誘導され、好中球や単球・マクロファージ等の免疫系細胞が心臓に浸潤します。これら免疫系細胞の浸潤は、過剰な炎症を誘導し、さらなる心筋細胞の死を誘導します。
 九州大学大学院薬学研究院薬効安全性学分野の黒瀬等教授、仲矢道雄准教授および薬学府博士課程2年の堀井雄真大学院生を中心とする研究グループ(順天堂大学医学部生化学第一講座の横溝岳彦教授、自治医科大学の田中亨教授ら)は、心筋梗塞部位に浸潤する好中球や単球・マクロファージに発現するLeukotriene B4 receptor 1(BLT1)が、それら免疫細胞の更なる浸潤を誘導し、梗塞部位の炎症を悪化させる分子であることを明らかにしました。
 さらに、心筋梗塞モデル処置を施したマウスに対して尾静脈からBLT1の阻害剤を投与した結果、心臓での炎症が抑制され、死ぬ心筋細胞の数が有意に減少しました。その結果、心筋梗塞後の生存率や心臓機能の悪化が改善されることも見出しました。また、心筋梗塞を発症された患者さんの心臓においても、BLT1を発現した好中球や単球・マクロファージの浸潤が確認されました。
以上の結果によりBLT1が心筋梗塞の新たな治療標的になる可能性が考えられました。
本研究成果は、令和2年5月8日(金)に米国科学雑誌 「The FASEB Journal」オンライン版に掲載されました。

論文名:
Leukotriene B4 receptor 1 exacerbates inflammation following myocardial infarction 
The FASEB Journal HP: 
 
著者名:Yuma Horii#, Michio Nakaya#*, Hiroki Ohara#, Hiroaki Nishihara#, Kenji Watari, Akiomi Nagasaka, Takeo Nakaya, Yuki Sugiura, Toshiaki Okuno, Tomoaki Koga, Akira Tanaka, Takehiko Yokomizo and Hitoshi Kurose* 
#: First author, *: Corresponding author

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