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研究成果

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研究成果 2019年

研究成果
バクテリア染色体DNAの複製開始タンパク質が活性化する分子機構を解明
分子生物薬学分野 Nucleic Acids Res誌 (IF=11.1)
2019.09.25

アクセス数:3449

 DnaAタンパク質は病原菌を含むバクテリアに広く共通して存在しており、染色体DNA複製を開始させる重要な働きがあります。大腸菌の細胞周期において、基本的にDnaAタンパク質はADP結合によって不活性化されていますが、複製開始のタイミングに合わせてADPとATPが入れ替わり、ATP結合型DnaAタンパク質が生じ、複製開始反応を活性化します。しかしながらDnaAタンパク質からADPを解離する分子機構は解明されていませんでした。
 九州大学薬学研究院分子生物薬学分野の片山 勉教授らは、以前、ゲノムDNA上の特異的な部位DARS (DnaA-Reactivating Sequence) においてADP結合型DnaAタンパク質がATP結合型DnaAタンパク質に変換されることを発見していました(Fujimitsu et al., Genes Dev., 2009)。DARSでは、複数のADP結合型DnaAタンパク質が結合して動的な複合体を形成し、そこでDnaAタンパク質からADPが解離し、そのかわりにATPがDnaAタンパク質に結合します。今回の論文では、DARS-DnaAタンパク質複合体を詳細に解析し、DnaAタンパク質のATP/ADP結合ドメイン(AAA+ドメイン)による新たな相互作用機構により、ADP解離が導かれることを解明しました。AAA+ドメインは、ヒトを含む真核細胞の複製開始タンパク質やDNA複製・組換えタンパク質のみならず、多くのタンパク質複合体や細胞膜の制御タンパク質に保存されている重要な機能因子ですが、今回はこれまでに見出されていなかった新たなAAA+ドメインの分子機構を解明したものです。この成果は新規な抗菌剤や抗がん剤の開発研究に繋がる可能性もあります。
 本研究成果は、Nucleic Acids Research誌に9月19日付けでオンライン発表されました。


論文
Sugiyama, R., Kasho, K., Miyoshi, K., Ozaki, S., Kagawa, W., Kurumizaka, H., and Katayama, T. (2019) A novel mode of DnaA-DnaA interaction promotes ADP dissociation for reactivation of replication initiation activity.
Nucleic Acids Res. (in press)
doi: 10.1093/nar/gkz795  (オープンアクセス)

分子生物薬学分野
http://bunsei.phar.kyushu-u.ac.jp

九州大学2009年プレスリリース
ゲノム DNA 複製開始を制御する新規 DNA 因子の発見とそれを用いた試験管内 DNA 複製制御システムの開発