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研究成果

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研究成果 2019年

研究成果
抗喘息薬イブジラストに筋萎縮抑制効果
~抗がん剤の副作用軽減など、薬の適応拡大に期待~
創薬育薬研究施設統括室 British Journal of Pharmacology
2019.09.05

アクセス数:6578

 今回、九州大学大学院薬学研究院の西田基宏教授(自然科学研究機構生理学研究所(生命創成探究センター)兼任)と西山和宏特任助教は、静岡県立大学、 大阪府立大学、東京大学との共同研究で、心筋細胞や骨格筋細胞を萎縮させる原因となるTRPC3-Nox2タンパク質複合体の形成を阻害する薬剤を既承認薬の中から見つけ出し、抗がん剤の副作用による心筋や骨格筋の萎縮を軽減することを明らかにしました。
 がんやがん治療に伴ない、四肢・体幹や心臓の筋肉がやせ細ることがあります。この様な筋肉の萎縮は、日常生活での支障の原因となり、また病状の悪化にもつながります。しかしながら、筋肉の萎縮に対する有効な治療法は確立されていません。本研究により、抗がん剤やタバコ副流煙によって、TRPC3とNox2の複合体が形成され、心筋毒性や骨格筋萎縮、免疫毒性が引き起こされることが明らかとなりました。さらに、抗喘息薬であるイブジラストがTRPC3-Nox2複合体の形成を抑制することでこれらの副作用を軽減することを見出しました。抗がん剤との併用療法により、化学療法の安全な継続使用が可能になり、適応疾患の幅も広がる可能性が期待されます。また、イブジラストは筋肉や臓器の萎縮を軽減できる可能性があり、イブジラストの適応拡大により健康長寿社会の実現に大きく貢献する可能性も期待できます。
本研究結果は、英国薬理学会誌に掲載されました(令和元年 8月 30日号掲載)。




論文タイトル
Ibudilast attenuates doxorubicin-induced cytotoxicity by suppressing formation of TRPC3-Nox2 protein complex.

著者
Nishiyama K, Numaga-Tomita T, Fujimoto Y, Tanaka T, Toyama C, Nishimura A, Yamashita T, Matsunaga N, Koyanagi S, Azuma YT, Ibuki Y, Uchida K, Ohdo S and Nishida M*. (*Corresponding Author)

DOI: https://doi.org/10.1111/bph.14777

創薬育薬研究施設統括室HP
http://www.nips.ac.jp/circulation/