SiteMap Close

研究成果

ホーム > 研究成果 2018年 > 詳細ページ

研究成果 2018年

研究成果
緑茶カテキンEGCGによるアミロイド繊維の新規抑制機構を提唱
蛋白質創薬学分野 BBA - General Subjects
2018.08.10

アクセス数:4846

タンパク質のフォールディング機構が異常となって起こるアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の抑制分子の開発は、来るべき「人生百年社会」において喫緊の課題です。そのためには、その発症機構を解析することが有効です。アルツハイマー病では、細胞傷害性を持つ可溶性アミロイド繊維の生成が疾患と深く関与していることが多くの論文で示されています。AL(Amyloid Light chain)アミロイドーシスは、アルツハイマー病やパーキンソン病と同様に、タンパク質・ペプチドの構造変化が病因と考えられるコンフォーメーション病で、異常形質細胞から産生されたヒト抗体L鎖のフォールディング異常によりアミロイド繊維が形成し、その繊維が全身に沈着し、臓器障害を引き起こすことにより発症します。EGCG (epigallocatechin-3-O-gallate)は緑茶に多く含まれるカテキンの一種で、ALアミロイドーシス、アルツハイマー病などのコンフォーメーション病の発症を抑制するとの結果が多数報告されていますが、その抑制機構はよくわかっていませんでした。
 九州大学大学院薬学研究院蛋白質創薬学分野の阿部義人准教授、植田正教授、らのグループはカテキンの研究で著名な九州大学大学院農学研究院食料化学研究室の立花宏文教授との共同研究により、EGCGが生理条件下においてALアミロイドーシスの原因となるヒト抗体L鎖の一種であるWilのアミロイド形成を抑制することを見出しました。また、EGCGはWilの変性構造に優先的に結合した後、酸化、架橋などの化学反応を誘起し、細胞毒性を持つアミロイド線維の形成を抑制することを示唆しました。この結果は、EGCGが抗体L鎖の一種の未変性構造に優位に結合すると考えられていた説(Pelaez-Aguilar AE et al. (2015) Biochemistry, 54, 4978-4986)を覆す結果です。本部局はタイのチュラロンコン大学薬学部との部局間交流協定を締結しており、本研究には、同大学からの2017年度JASSO交換留学生Nantanat Aeimhirunkailas君が共著者となっています。



この研究結果は、国際科学誌「Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects」に2018年8月6日付けでオンライン発表されました。


論文名
Inhibition of amyloid fibril formation in the variable domain of 6 light chain mutant Wil caused by the interaction between its unfolded state and epigallocatechin-3-O-gallate

Yoshito Abe, Naoki Odawara, Nantanat Aeimhirunkailas Hinako Shibata, Naoki Fujisaki, Hirofumi Tachibana, Tadashi Ueda 

Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
https://doi.org/10.1016/j.bbagen.2018.08.006
DOI: 10.1016/j.bbagen.2018.08.006

蛋白質創薬学分野
http://meneki.phar.kyushu-u.ac.jp/Protein/TOP.html