SiteMap Close

研究成果

ホーム > 研究成果 2018年 > 詳細ページ

研究成果 2018年

研究成果
光親和性標識法の新たな分子ツールの開発-疎水性が低くコンパクトな光
反応性基-
薬物分子設計学分野 ACS Chemical Biology
2018.03.16

アクセス数:3697


  九州大学大学院薬学研究院の平井剛教授(元理化学研究所、専任研究員)、理化学研究所の袖岡幹子主任研究員(環境資源科学研究センター グループディレクター)らの共同研究グループは、薬剤(生物活性分子)の結合タンパク質同定手法の一つである「光親和性標識法」に利用可能な新たな分子ツールとして、2-チエニル置換型α-ケトアミド構造を開発しました。


 光親和性標識法は、生物活性分子の結合タンパク質同定に用いられるケミカルバイオロジー研究には欠かせない手法の一つです。この手法では、光によって結合タンパク質と共有結合を形成する「光反応性基」を用います。従来の光反応性基は十分な反応性を発揮させるために、疎水性で嵩(かさ)高い構造が必要でした。そのため、真の結合タンパク質以外のタンパク質とも非特異的に相互作用し、共有結合を形成するという欠点がありました。しかし、この欠点を克服した新たな光反応性基の開発はほとんど行われてきませんでした。

 今回、共同研究グループは、α-ケトアミド構造が光反応性基として機能すると考え、α-ケトアミド構造を生物活性分子としてマンノース構造に連結した分子ツールを作製し、タンパク質のコンカナバリンAとの光親和性標識実験を行いました。その結果、チエニル基を持つα-ケトアミド(2-チエニル置換型α-ケトアミド構造)が良好な反応性を示し、光反応性基として十分機能することを見いだしました。この新し
い光反応性基は、従来のものよりも疎水性が低くコンパクトで、非特異的な結合が著しく抑制できることが分かりました。

 本成果は生理活性天然物や薬剤だけでなく、ペプチド、タンパク質、糖鎖、核酸、脂質など幅広い分子群と結合タンパク質の相互作用の解析に利用可能な分子ツールとして有望と考えられます。また、チエニル基の効果をさらに研究することで、今後、より機能性の高い光反応性基の開発につながると期待できます。

 本研究は、米国の科学雑誌『ACS Chemical Biology』オンライン版(2月19日付け)に掲載されました。


本研究の詳細は、九州大学プレスリリース
論文名:Thienyl-Substituted α-Ketoamide: A Less Hydrophobic Reactive Group for Photo-Affinity Labeling
著者:Eisuke Ota, Kazuteru Usui , Kana Oonuma, Hiroyuki Koshino, Shigeru Nishiyama, Go Hirai, and Mikiko Sodeoka
雑誌名:ACS Chemical Biology
DOI:10.1021/acschembio.7b00988


九州大学大学院薬学研究院 
薬物分子設計学分野