研究成果 2014年
非コード型DNA因子DARS2とヒストン様因子IHFおよびFisによる複製開始の制御
分子生物薬学分野 Nucleic Acids Research誌アクセス数:6757
九州大学大学院薬学研究院分子生物薬学分野(片山 勉教授)は、染色体の複製開始を制御する新たな分子機構を解明しました。大腸菌の細胞周期において複製開始が正しい時期に起こるためには、複製開始蛋白質DnaAが不活性なADP型から、活性のあるATP結合型にタイミングよく変換される必要があります。これまでの同分野の研究により、ADP-DnaAが染色体上の非コード型DNA因子DARS2と相互作用すると、ヌクレオチド交換が促進されATP-DnaAに変換することが見出されておりました(Fujimitsu et al., Genes Dev., 2009)。しかしながら、細胞周期においてDARS2がどのようにタイミングよく活性化されるかという制御機構は不明でした。同分野は今回の研究において、DARS2に結合する2種の蛋白質IHFおよびFisを同定しました。これらは細菌型ヒストン様因子とも呼ばれるDNA結合因子です。DARS2の活性化には両者の結合が必要でした。さらに、IHFは複製開始前の時間帯のみでDARS2と結合しました。Fisは増殖が活発な細胞のみでDARS2に結合していました。このようにIHFとFisの時期特異的な結合によって、DARS2が増殖中の細胞でタイミングよく活性化されることがわかりました。このことが正しいタイミングで複製開始を起こすための基盤となっていたのです。今後は、特にIHFとDARS2の結合を制御する分子機構の解明が重要となります。
この成果は、Nucleic Acids Research誌に2014年11月6日付でオンライン発表されました。なお本研究は奈良先端科学技術大学院大学との共同研究を含みます。
論文
Timely binding of IHF and Fis to DARS2 regulates ATP–DnaA production and replication initiation
Kazutoshi Kasho, Kazuyuki Fujimitsu, Toshihiro Matoba, Taku Oshima and Tsutomu Katayama
Nucleic Acids Research (2014) doi: 10.1093/nar/gku1051
リンク
http://nar.oxfordjournals.org/content/early/2014/11/06/nar.gku1051.full
分子生物薬学分野