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研究成果

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研究成果 2014年

研究成果
遺伝情報の複製制御プログラムのあたらしい仕組みを発見
医薬細胞生化学分野 Molecular Cell誌
2014.05.27

アクセス数:7455

 九州大学薬学研究院医薬細胞生化学分野の吉田和真助教らは、 フランス人類遺伝学研究所 (www.igh.cnrs.fr) Dr. Philippe PASERO研究室との共同研究で、出芽酵母のDNA複製開始制御について、次世代シークエンサーを用いたゲノムワイドな解析を行い、ヒストン脱アセチル化酵素 Sir2およびRpd3がリボソームDNA(rDNA)の複製活性調節を介してDNAの複製開始プログラムを制御していることを発見しました。

 

 正確なDNA複製はゲノム安定性の維持において重要であり、生命の自己複製システムの根幹です。真核細胞の染色体DNA複製は、ゲノム上の多数の複製開始点から様々なタイミングで始まります。ゲノム複製プログラム、すなわちどの開始点がどのタイミングで使用されるかは、細胞の系統や分化/発生のプロセスに応じて柔軟に変化する事が知られており、最近ではがん細胞で見られるゲノム再編成や遺伝子の突然変異頻度との相関が報告され始めています。本研究では、ゲノム複製制御プログラムの分子的な基盤を解明するために、出芽酵母をモデル系として全ゲノム領域のDNA複製開始活性について解析を行いました。

 出芽酵母において、複製開始点の約30%は繰り返し配列であるrDNA領域中に存在しています。本研究の結果、これらの複製活性がそれ以外の一般的なゲノム領域の複製開始と競争的関係にあり、rDNAの複製活性が上昇すると他の領域のDNA複製が遅れることが分かりました。さらにクロマチン構造を緩めたり締めたりして調節するヒストン修飾酵素Rpd3Sir2が、rDNA領域の複製活性を対立的にそれぞれ正と負に制御しており、その結果がゲノム全体の複製に影響することを明らかにしました。本報告のデータは、出芽酵母において、多数の単一コピーの複製開始点の個別な制御より、むしろ多コピー開始点であるrDNAの通常の開始点に対する競争力を調節する事がDNA複製制御において重要であることを明示しています。これは複雑なゲノム複製プログラムを理解していくうえで新たな視点を与える重大な発見です。

 

この研究成果は、米国科学誌「Molecular Cell」に2014522日付けで発表されました。

 

論文

The Histone Deacetylases Sir2 and Rpd3 Act on Ribosomal DNA to Control the Replication Program in Budding Yeast.

Yoshida K, Bacal J, Desmarais D, Padioleau I, Tsaponina O, Chabes A, Pantesco V, Dubois E, Parrinello H, Skrzypczak M, Ginalski K, Lengronne A, and Pasero P.

Molecular Cell. 54, 691-697 (2014)

 

リンク

Molecular Cell

http://www.cell.com/molecular-cell/abstract/S1097-2765%2814%2900393-1

 

医薬細胞生化学分野

http://tansaku.phar.kyushu-u.ac.jp/saito/top.html