研究成果

2019-01-22

皮膚からの痒みを伝える神経の刺激因子を特定

痒みは掻きたいという欲望を起こさせる不快な感覚です。しかし,痒みという感覚がどのように発生するのかなど,その仕組みはほとんど分かっていません。最近,MrgprA3というタンパク質を作る神経を無くすと痒みが弱くなることが報告され(Nat Neurosci 16: 174-182, 2013),この神経が皮膚からの痒みを伝える神経として注目されています。しかし,この神経を刺激する因子はこれまで不明でした。
九州大学大学院薬学研究院ライフイノベーション分野の津田誠教授,白鳥美穂助教らの研究グループは,細胞外のATPがこの痒み神経を刺激する因子であることを突き止めました。同研究グループは,ATPが作用するP2X3受容体(神経を興奮させるタンパク質)がMrgprA3神経にあること,そして皮膚にATPをマウスの皮膚に注射すると痒み行動が出現することを明らかにしました。また,皮膚を激しく引掻くアトピー性皮膚炎モデルマウスでは,P2X3受容体が増え,その受容体の活動を薬物で抑えると慢性的な痒みが緩和されることも明らかにしました。
この研究成果は,痒みのメカニズムの一端を明らかにしたもので,将来的に慢性的な痒みを鎮める治療薬の開発にも応用できることが期待されます。
本研究は,九州大学(薬学研究院,医学研究院),富山大学,米国ジョンズホプキンス大学との共同研究の成果であり,国際共著論文として 『J Allergy Clin Immunol』 誌に掲載されました。

論文タイトル
Role of P2X3 receptors in scratching behavior in mouse models

著者
Shiratori-Hayashi M, Hasegawa A, Toyonaga H, Andoh T, Nakahara T, Kido-Nakahara M, Furue M, Kuraishi Y, Inoue K, Dong X, Tsuda M

掲載誌
Journal of Allergy and Clinical Immunology   (IF: 13.258)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S009167491831604X?via%3Dihub

ライフイノベーション分野HP
http://life-innov.phar.kyushu-u.ac.jp/

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