研究成果

2018-09-13

窒素上無保護ケチミンに対する求核付加反応の新展開:世界初の触媒的不斉脱炭酸マンニッヒ型反応による非天然アミノ酸類の直接合成法の開発に成功

九州大学大学院薬学研究院 環境調和創薬化学分野の大嶋孝志教授、森本浩之講師らの研究グループは、医薬品などの生物活性物質の原料として重要な、窒素上無保護の非天然アミノ酸類を直接供給可能とする新しい反応の開発に成功しました。

無保護ケチミンに対する求核付加反応は、不要な保護基の着脱をせずに不斉四置換炭素をもつ非天然アミノ酸類を合成可能な手法として近年注目を集めています。この無保護ケチミンを用いた非天然アミノ酸類の化学合成法として、大嶋孝志教授・森本浩之講師らの研究グループでは以前にカルボニル化合物の直接求核付加反応を報告していました。しかし、適用可能な無保護ケチミンの構造に制限があり、合成可能な非天然アミノ酸の種類の拡大に改善の余地を残していました。

今回、大嶋教授・森本講師らは、β-ケト酸を求核剤として活用することで、以前報告した反応では実現不可能であった、窒素原子が無保護のイサチン由来のケチミンに対する反応が脱炭酸を伴って円滑に進行することを見いだしました。本反応は様々な置換基を有する基質に適用可能であり、高い収率およびエナンチオ選択性にて不斉四置換炭素を有する窒素上無保護の非天然アミノ酸類を直接合成できました。さらに、今回開発した反応を活用して、ガストリン受容体拮抗薬の1つである(+)-AG-041Rの世界最短(6段階)合成にも成功しました。今後、同様の手法を用いることで、従来の手法では合成が困難であった様々な無保護アミン類の短工程合成が可能となることが期待されます。



以上の研究成果は、米国化学会が出版する国際総合化学誌「Organic Letters (IF 6.5)」に2018年8月14日付けオンライン版で発表されました。

論文名
Catalytic Enantioselective Decarboxylative Mannich-Type Reaction of N‑Unprotected Isatin-Derived Ketimines

著者
Masanao Sawa, Shotaro Miyazaki, Ryohei Yonesaki, Hiroyuki Morimoto* and Takashi Ohshima*

発表誌
Organic Letters, ASAP. (DOI: 10.1021/acs.orglett.8b02306)
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.8b02306

環境調和創薬化学分野HP
http://green.phar.kyushu-u.ac.jp

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