研究成果

2017-04-05

アルコールによるアミド型配向基選択的な触媒的直接切断反応を実現!

九州大学大学院薬学研究院 環境調和創薬化学分野の大嶋孝志教授、森本浩之講師らの研究グループは、アルコールとニッケル触媒のみを用いて、強固なアミド型配向基を合成化学上有用なエステルに直接変換する反応の開発に成功しました。

アミドはタンパク質や高分子、生理活性物質などに広くみられる重要な構造の1つです。近年は有機化合物の炭素—水素結合官能基化反応における合成中間体としても注目されていますが、活性化されていないアミド結合の切断はその安定性の高さから一般に困難であり、強酸や強塩基などの厳しい条件が必要なため、官能基共存性に改善の余地を残していました。また、近年アルコールを用いる触媒的切断手法も開発されていましたが、アミド型配向基を直接切断可能な反応は報告がありませんでした。

今回大嶋教授らは、アミド型配向基として数多く利用されている8-アミノキノリンアミドについてアルコールによる切断反応の検討を行った結果、入手容易で水や空気に安定なニッケル触媒が有効に機能することを見出し、対応するエステルへの変換を達成しました。本反応は、炭素—水素結合官能基化反応の生成物に対しても有効に機能し、グラムスケール合成への適用や配向基の回収も可能でした。また、既存の切断反応では実現困難な高い官能基共存性や化学選択性も実現しており、同分野で開発した鉄(III)サレン触媒を用いることでアルコールの適用基質の拡大にも成功していることから、多様な構造を有するエステルの合成への応用も期待されます。

この研究成果は、アメリカ化学会が発行する雑誌「ACS Catalysis (IF 9.3)」に2017年3月28日付けオンライン版で発表されました。

論文名
Direct Catalytic Alcoholysis of Unactivated 8-Aminoquinoline Amides
Toru Deguchi, Hai-Long Xin, Hiroyuki Morimoto* and Takashi Ohshima*
ACS Catalysis 2017, 7, 3157–3161.
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acscatal.7b00442

環境調和創薬化学分野
http://green.phar.kyushu-u.ac.jp

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