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2025-02-03
タンパク質配列を部位選択的に切断するシステインホルミル化修飾法の開発
〜タンパク質配列・機能を化学的に制御する新規プラットフォームとして期待〜
翻訳後修飾(PTM)は、生体内タンパク質の構造と機能を制御する重要な役割を持っています。低分子化合物などによりタンパク質を人為的に化学修飾する手法は、標的タンパク質の可視化・機能制御など、タンパク質研究において広く利用されています。その一方で、タンパク質の骨格配列を部位選択的に切断できるような化学修飾法は報告が限られていました。
今回、九州大学大学院薬学研究院の王子田彰夫 教授、善明直輝 特任助教らを中心とする研究グループは、システイン側鎖をS-ホルミル化することでタンパク質配列主鎖のペプチド結合切断を誘起可能であることを見出しました。このS-ホルミル化を誘起する低分子化合物はシステイン側鎖に対する反応性の調節が可能で、アフィニティー駆動による標的タンパク質の部位選択的な切断を可能としました。さらに、切断によるタンパク質の機能制御や、これまで困難であった生細胞表層タンパク質への化学切断法の適用にも成功しています。
本手法は今後、細胞タンパク質中の切断可能な部位を網羅的に探索するケミカルプロテオミクス解析と組み合わせることで化学切断研究の進展につながると期待しています。
本研究は京都大学大学院工学研究科の浜地格 教授、田村朋則 講師、九州大学大学院薬学研究院の田畑香織 助教、名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所の三城恵美 講師との共同研究であり、戦略的創造研究推進事業(CREST)の助成のもとに⾏われた研究です。
本研究成果は、⽶国化学会の学術誌「Journal of the American Chemical Society」誌オンライン版に2025年1月17日(金)に掲載されました。
掲載誌
Journal of the American Chemical Society
タイトル
A Protein Cleavage Platform Based on Selective Formylation at Cysteine Residues
著者
Naoki Zenmyo, Yuya Matsumoto, Akihiro Yasuda, Shohei Uchinomiya, Naoya Shindo, Kaori Sasaki-Tabata, Emi Mishiro-Sato, Tomonori Tamura, Itaru Hamachi, Akio Ojida
創薬ケミカルバイオロジー分野HP
https://bunseki.phar.kyushu-u.ac.jp/
図. システインホルミル化によるタンパク質化学切断法