研究成果

2016-12-07

心筋梗塞後の病態を改善する新たな蛋白質の発見
~新たな心筋梗塞の治療法の開発に道~

 心筋梗塞とは、心臓の細胞に酸素や栄養を供給する冠動脈が動脈硬化等によって閉塞する心臓の病気であり、発症すると、閉塞した冠動脈によって酸素や栄養が供給されていた心臓の細胞が死にます。そして、それら死細胞は、マクロファージなどの貪食細胞によって認識されて食べられます。もし、死んだ細胞が放置されると、それら細胞から内容物が流出し、強い炎症が誘導され病態が悪化してしまいます。これまで、心筋梗塞時において、死んだ細胞が貪食細胞によってどのようなタンパク質を使って認識され、食べられているかについては、ほとんどわかっていませんでした。

 九州大学大学院薬学研究院薬効安全性学分野の仲矢道雄准教授と黒瀬等教授を中心とする研究グループ(大阪大学IFReCの長田重一教授、東京医科大学の黒田雅彦主任教授、自治医科大学の田中亨教授、九州大学大学院薬学研究院の井上和秀理事•副学長、津田誠教授、福岡大学医学部の井上隆司教授ら)は、この心筋梗塞時の死細胞の貪食をMFG-E8というタンパク質が促進している事、そしてこのMFG-E8を介した貪食が、梗塞部位に多く存在し、これまで貪食能を持つ事が知られていなかった筋線維芽細胞という細胞群によって担われていることを見出しました。さらに興味深いことに、心筋梗塞をおこした通常のマウスの心臓にMFG-E8を投与すると、心筋梗塞後の病態が大きく改善されることを世界で初めて見出しました。本成果により、MFG-E8の投与は心筋梗塞の新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。

 

本研究成果は、平成28125日(月)午後4時(東部標準時)に米国科学雑誌 The Journal of Clinical Investigation」オンライン版に掲載されました。




論文名:

 Cardiac myofibroblast engulfment of dead cells facilitates recovery after myocardial infarction

 

The Journal of Clinical Investigation HP: http://www.jci.org/articles/view/83822

 

著者名:Michio Nakaya, Kenji Watari, Mitsuru Tajima, Takeo Nakaya, Shoichi Matsuda, Hiroki Ohara, Hiroaki Nishihara, Hiroshi Yamaguchi, Akiko Hashimoto, Mitsuho Nishida, Akiomi Nagasaka, Yuma Horii, Hiroki Ono, Gentaro Iribe, Ryuji Inoue, Makoto Tsuda, Kazuhide Inoue, Akira Tanaka, Masahiko Kuroda, Shigekazu Nagata, and Hitoshi Kurose

 

九州大学プレスリリース:

http://www.kyushu-u.ac.jp/f/29409/16_12_06.pdf

 

薬効安全性学分野:

http://chudoku.phar.kyushu-u.ac.jp

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