研究成果

2015-05-20

DNA複製開始領域のクロマチン構造をオープンにする新規ヒストンシャペロンを発見

 九州大学大学院薬学研究院医薬細胞生化学分野の杉本のぞみ助教・藤田雅俊教授らの研究グループは、ヒト細胞のDNA複製開始制御について、次世代シークエンサーを用いたゲノムワイドな解析等を行い、GRWD1という新規ヒストンシャペロンによって複製開始領域のクロマチン動態が制御されていることを発見しました。

 

 遺伝情報の本体はDNAであり、それを正確に複製することはゲノムを安定に維持する上で必須です。DNAは大変長い構造体であるため、ヒストンというタンパク質の周りに巻きつき、規則正しく折りたたまれることで、非常にコンパクトに凝集して核内に収められています。このクロマチン構造はDNA複製開始に必要な複合体の形成時にほどかれると考えられますが、どのようなメカニズムによるかは不明でした。同研究グループにより、DNA複製開始に必須のタンパク質であるCdt1に結合する因子としてGRWD1が同定され、このGRWD1がヒストンシャペロン活性を持つことが明らかとなりました。そしてGRWD1は複製開始領域のクロマチンをオープンにし、複製開始を促進することが発見されました。また、ヒト細胞における複製開始領域の詳細は不明なままでしたが、本解析により、新規複製開始領域も複数同定されました。この成果は、遺伝情報継承の本質を捉える上で重要な発見であると考えられます。

 

この研究成果は、国際科学誌「Nucleic Acids Research」に2015518日付けオンライン版で発表されました。



「論文名」

Cdt1-binding protein GRWD1 is a novel histone-binding protein that facilitates MCM loading through its influence on chromatin architecture

 

「著者」

Sugimoto N, Maehara K, Yoshida K, Yasukouchi S, Osano S, Watanabe S, Aizawa M, Yugawa T, Kiyono T, Kurumizaka H, Ohkawa Y and Fujita M

 

DOI

10.1093/nar/gkv509

 

「論文オンライン公開HP

http://nar.oxfordjournals.org/content/early/2015/05/18/nar.gkv509.full

 

「医薬細胞生化学分野HP

http://tansaku.phar.kyushu-u.ac.jp/saito/top.html

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