トップニュース

2016-12-04

染色体DNAの複製開始複合体の精密構造が初めて見えるように-遺伝情報の継承を担う複合体の分子機構の解明-

染色体DNAの複製開始複合体の精密構造が初めて見えるように

 

遺伝情報の継承のためには、遺伝子の実体となる染色体DNAの複製が必要です。染色体DNAの複製は、複製起点と呼ばれるDNA領域での開始反応から始まります。開始反応では、通常2重鎖であるDNAを開いて2つの1本鎖にします。そのようなDNAの開裂を起こすため、複製起点には多数のタンパク質が結合して、複雑で動的な構造体が造られます。これが複製開始複合体です。しかし、これまでその構造や働きをはっきり見ることができませんでした。

 今回、その壁を打ち破るため、高田彰二 京都大学大学院理学研究科教授、および、片山 勉 九州大学大学院薬学研究院教授の共同研究グループは、複製開始複合体の構造をコンピューターシミュレーションする研究(京都大学グループ)と生化学的に実験解析する研究(九州大学グループ)とを連携して進めました。対象としたのは、分子生物学のモデル生物となっている大腸菌の複製開始複合体です。新たに開発した計算手法を用いて、13個のタンパク質が規則的に集合して造られる、複製開始複合体をコンピューター内で構築することに初めて成功しました。また、この複合体構造は生化学実験の結果とよく整合していることも確かめられました。これにより、この複合体の精密な構造や働きまで見えるようになり、DNAの構造が変換するメカニズムを合理的に説明できるようになりました。

 この成果は遺伝情報の継承のメカニズムを理解するために欠かせないものです。また、多くの生物に共通する基本的な生命原理を示唆するものでもあります。さらに抗菌剤や抗がん剤の開発研究にも繋がるものです。加えて、生命活動に重要な多くの複合体の構造解明のために活用できる、新たな手法を切り拓いたものです。

 本成果は、米国科学アカデミー紀要に1129日にオンライン発表されました。

 

論文タイトル

Near-atomic structural model for bacterial DNA replication initiation complex and its functional insights

 

著者

Masahiro Shimizu, Yasunori Noguchi, Yukari Sakiyama, Hironori Kawakami, Tsutomu Katayama,and Shoji Takada

 

掲載誌:Proceedings of the National Academy of Science of the USA (PNAS)

 

doi:10.1073/pnas.1609649113

 

九州大学プレスリリース(よく詳しい解説はこちらで)

http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/63

 

分子生物薬学分野

http://bunsei.phar.kyushu-u.ac.jp

ページトップ